見えないものに思いを馳せて(2014年4月)

2014年月4度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

春になりました。花の美しい、そして、まもなく緑が目に染みる季節を迎えようとしています。話は少し変わりますが、私は季節に関わらず、ずっと宇宙と向き合っていまして、最近、一つ思うことがあり、その話をお伝えしたいと思います。

我々は宇宙をいろいろな手段で観測しておりまして、すでに人類は膨大なデータを手にしています。ただし、そこで注意しなければいけないことは、そのような観測データでも全く捉えられていないもの、天体、物質があり、それはおそらく夥しい量だということです。このようなみえていない存在に対して、いかに強く深い想像力を発揮し、その存在の意義に思いを巡らせることができるのか、それが非常に大事なポイントではないかと思っています。そのようなみえていない物質に思いを馳せながら、現在、我々が手にしているデータの意味を解読することが必要です。

例えば太陽系について考えてみます。太陽と地球の間の距離を1天文単位といいますが、太陽系は、その数百倍まで広がっています。例えば太陽と地球の間の距離の200倍、300倍のところに数kmの大きさの天体があったとして、自分自身は光っていないとします。そのような天体は、いまの感度では絶対に捉えることはできません。ですから、裏返していいますと、太陽系においても、我々が知っている天体の情報は非常に限られているということです。そのようなものの存在を我々は意識しながら太陽系の成り立ちを考える必要があると思います。

同じような意味で、非常に観測が難しく、すべての物体を捉えきれない領域として銀河系の中心部があります。銀河系の中心部には非常に巨大なブラックホールがあり、距離としては3万光年弱のところにあります。銀河系の中心部は光ではみえず、しかも距離が比較的遠いので、銀河系の中心にあるエネルギー、あるいは物質を、我々はまだまだ捉えきれていません。解明するためには、非常に謎の多い、難しい領域です。

我々はことしの初め、そのブラックホールから螺旋状のジェットが出ていて、そこには確かに相当量のガスが付随しているということを論文で発表しまして、なかなか注目されています。しかし、そのような発見にも関わらず、私にとって銀河系の中心部は、さらに想像力を逞しくして、みえていないものに思いを馳せることが、非常に大事な領域です。

以上で今月のメッセージとさせていただきます。ありがとうございました。

【キーワード】 研究・観測