平成15年度発足 科学研究費補助金 特定領域研究
サブミリ波帯からテラヘルツ帯に至る 宇宙観測の開拓
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研究項目A01  テラヘルツ帯分光観測の開拓
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研究項目A02  サブミリ波帯分光観測の深化

本研究項目はサブミリ波観測の本格的展開をねらうもので、3つの計画研究を設ける。これらの計画研究においては、サブミリ波帯における観測技術の向上を図りながら、好観測サイトを生かしてサブミリ波観測の質的量的飛躍を目指す。特に、銀河系スケールから星間分子雲スケールでの炭素の振る舞いに着目し、分子雲の形成と進化、星形成を探る。


計画研究 ウ:
局所群における炭素原子・一酸化炭素分子の挙動の解明

研究代表者: 福井 康雄(名古屋大学・大学院理学研究科・教授)
電波天文学・研究の統括、受信機開発

本研究計画は、水蒸気量が少なく、ミリ波・サブミリ波の透過係数が高いチリ共和国のアタカマ砂漠において口径4メートルのミリ波・サブミリ波望遠鏡(「新なんてん望遠鏡」)を用い、230-690GHz帯の炭素原子・一酸化炭素分子スペクトルにより、我々の銀河系内、および銀河系の伴銀河である大小マゼラン銀河、および近傍の銀河内の星間ガス諸相の分布、運動、物理状態の徹底した掃天観測を行う。そのために検出器工場として、名古屋大学構内にクリーンルームを備え、サブミリ波の超伝導薄膜素子製作の拠点を形成する。ここで開発した高感度超伝導アレイ受信機とさらに新開発のOn-the-Fly(OTF)観測法を用いることにより、従来の観測効率を10倍以上上回る究極のサーベイ望遠鏡「新なんてん」を完成させ、短時間にかつてない広範囲のサブミリ波高感度掃天観測を初めて実現させる。 星の内部で生成される重元素のひとつである炭素原子に着目し、低密度領域をトレースする中性炭素(CI)スペクトルから高密度ガスの物理状態をトレースする高励起の一酸化炭素分子(CO)スペクトルまでを駆使することにより、 (1)原子雲から重力収縮による分子雲の形成過程(自発的な星間ガスの相変化)、(2)大質量星からの星風、紫外線および超新星爆発による分子ガス雲の散逸と形成過程(誘発的な星間ガスの相変化)、(3)マゼラン銀河などの不規則銀河やわい小銀河と我々の銀河系のような渦巻き銀河の比較から、渦巻き銀河と不規則銀河の重力場の違いや超新星爆発のような大規模な擾乱等が星間ガス諸相の物理状態に与える影響を観測的に解明する。これらの観測データと他の計画研究から得られる情報とを総合することにより、局所群を構成するさまざまな銀河内部における星間ガスの循環と相変化、分子雲・分子雲コアから星の形成へと至る星間ガスの重力凝縮の全貌等、これまで理論モデルの枠内にとどまっていた領域に初めて観測的・実証的なメスを入れる。


計画研究 エ:
高感度ミリ波サブミリ波受信機を用いた高分解能観測による大質量星形成機構の解明

研究代表者: 小川 英夫(大阪府立大学・総合科学部・教授)
電波天文学・研究の統括、超伝導受信機の開発、ASTE望遠鏡による観測

ミリ波サブミリ波 (周波数 100-350 GHz) 帯における2 偏波・両サイドバンド同時受信可能な超高感度かつ広帯域超伝導受信機を開発し、チリ北部アタカマ砂漠に設置された口径 10 メートルのアタカマサブミリ波望遠鏡 (ASTE) に搭載する。極限的な性能を持った受信機による高い観測効率と10 メートル鏡の高い空間分解能を活かして、数年という短い期間内で銀河系内および近傍銀河内の巨大分子雲の徹底的な高感度・高分解能イメージング観測を行ない、大質量星の形成領域 (ホット・コア)の完全なサーベイを行なう。

大質量星の進化は非常に早く、また星形成活動が母体のガス雲であるホット・コアの物理状態へ影響を与える。したがって、生まれる星の質量と母体となるホット・コアの質量等との関係を導くためには、星形成活動の影響を受けていない「星が生まれる直前のホット・コア」をターゲットとする必要がある。本研究ではまず一酸化炭素輝線 (CO J=1-0 @115 GHz) 等を用いた銀河系内の巨大分子雲の完全なアトラスを作成する。このアトラスを用いることにより、大質量星が生まれる直前のホット・コアを効率良く選定する事が可能となる。これらのターゲットに対し、CO J=3-2 @345 GHz、シアン化メチル CH3CN J=8-7 @147GHz、メタノール CH3OH J=5-4 @241 GHz 等を用いた観測を行ない、さらに他の計画研究によって得られるサブミリ波帯からテラヘルツ帯にわたる観測結果も含めて解析を行なう事により、ホット・コアの温度分布や密度分布などの物理状態を精度良く求めることが可能となる。ホット・コアの質量・温度・外圧などと形成されている星の質量との関係を導き出し、星の質量決定機構の解明を目指す。星の質量決定機構の解明は、我々の銀河系の初期質量関数 (IMF) の解明への手がかりとなり、また IMF を通して他の銀河における星形成との比較が初めて可能となるなど波及効果は非常に大きい。


計画研究 オ:
純回転輝線の観測による星間空間中の温かい水素分子数の決定

研究代表者: 長田 哲也(京都大学・大学院理学研究科・教授)
赤外線天文学・研究の統括、望遠鏡の開発

本計画研究では、中間赤外域にある純回転輝線をプローブとして、これまでほとんどなされたことがない、水素分子に対する直接測定を初めて大規模に行なう。このために、小型(口径50cm)の赤外最適化望遠鏡をチリのアタカマ高地に設置し、波長分解能1万の高分散分光器を搭載して、以下のような領域で温かい水素分子からのS(1)輝線(17μm)を検出する。

  • HII領域の外側や、星形成領域にひろがる光解離領域PDRからは広い分布が期待される
  • わが銀河中心領域はガスの温度が高く、独特の環境のもとで強く輝線を放射していると考えられる
  • 活動的銀河核やスターバースト銀河からも同様に強い輝線が予想される

波長17μmに対して、50cmの口径の望遠鏡の回折限界は8秒角となり、銀河系内の天体に関してはS(1)輝線の分布が広域にわたって観測できると考えられる。地上からの観測可能性を左右する重要な鍵は高い波長分解能と乾燥した観測地であり、本研究では、新技術を用いたファブリペロ駆動系を使ってコンパクトな高分散分光器を開発し、それを中間赤外域大気透過率のきわめて良いアタカマに置く。

分子雲の質量の大部分を占める水素分子のうち温かいものの量を実際に決定して、他の計画研究で明らかになるさまざまな他の分子や原子(CO, CI, N+等)の分布との間の相関をとることによって、分子雲に関する本質的な理解が初めて得られる。将来の衛星からの観測計画でも水素分子の大規模な撮像サーベイは予定されておらず、分子雲研究の上でユニークなデータを提供できるものである。

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