計画研究 オ:
純回転輝線の観測による星間空間中の温かい水素分子数の決定
研究代表者: |
長田 哲也(京都大学・大学院理学研究科・教授)
赤外線天文学・研究の統括、望遠鏡の開発 |
本計画研究では、中間赤外域にある純回転輝線をプローブとして、これまでほとんどなされたことがない、水素分子に対する直接測定を初めて大規模に行なう。このために、小型(口径50cm)の赤外最適化望遠鏡をチリのアタカマ高地に設置し、波長分解能1万の高分散分光器を搭載して、以下のような領域で温かい水素分子からのS(1)輝線(17μm)を検出する。
- HII領域の外側や、星形成領域にひろがる光解離領域PDRからは広い分布が期待される
- わが銀河中心領域はガスの温度が高く、独特の環境のもとで強く輝線を放射していると考えられる
- 活動的銀河核やスターバースト銀河からも同様に強い輝線が予想される
波長17μmに対して、50cmの口径の望遠鏡の回折限界は8秒角となり、銀河系内の天体に関してはS(1)輝線の分布が広域にわたって観測できると考えられる。地上からの観測可能性を左右する重要な鍵は高い波長分解能と乾燥した観測地であり、本研究では、新技術を用いたファブリペロ駆動系を使ってコンパクトな高分散分光器を開発し、それを中間赤外域大気透過率のきわめて良いアタカマに置く。
分子雲の質量の大部分を占める水素分子のうち温かいものの量を実際に決定して、他の計画研究で明らかになるさまざまな他の分子や原子(CO, CI, N+等)の分布との間の相関をとることによって、分子雲に関する本質的な理解が初めて得られる。将来の衛星からの観測計画でも水素分子の大規模な撮像サーベイは予定されておらず、分子雲研究の上でユニークなデータを提供できるものである。
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