宇宙人から見た地球人の姿は、グロテスクなものなのでしょうか?

お互いあまりになじみがないから、きっとグロテスクに感じるでしょうね、というのはつまらないので、意外にグロテスクではないのではないか、と論じてみることにしましょう。

UFOから降り立った宇宙人に地球人は「怪物」のように見えるでしょうか。 でも、そもそも怪物とは何でしょう。ヒントは、メアリー・シェリーの傑作『フランケンシュタイン』です。アニメの『怪物くん』では、フランケンシュタインの怪物は、首にボルトが挟まった、縫い目だらけの、とろんとした眼の大男ですが、原作では違います。 フランケンシュタイン博士は、完璧な人間をつくろうとして、いくつもの死体からそれぞれ美しい「部品」をより抜いて組み合わせたのです。 にもかかわらず、美しいどころかおぞましい「怪物」になってしまいました。 なぜでしょう。それは、異なる部品から組み立てられているからです。 ケンタウロス、ミノタウロス、スフィンクス。神話において、怪物は決まって異なるものから集められた部分からなっています。 個々のパーツが美しかろうが、異なる生き物からパーツを集めたというだけで、もう怪物なのです。

 部分の美しさと寄せ集めのグロテスクさの対比は、シェリーの執筆当時に盛んだったロマン主義美学を念頭に置いています。 生きた全体はつねに構成部分の寄せ集め以上のものであり、均整のとれた有機体の美しさは個々の部分の美しさには還元されないという考え方です。 しかし、宇宙人も地球人も、それぞれの環境に適応して進化してきたので、調和をもった有機体であるはずです。 だから、宇宙人の想像を絶した私たちの生きた統一体としての姿は、ロマン主義美学的にはそれなりに美しいはずだということになります。

(戸田山和久)


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