ノートを取って全身で学ぶ(2013年6月)

2013年6月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

私は週に何回か、学生を相手にいたしまして、教室で講義をしておりますが、講義の仕方については、ここ20年、あるいは30年で大きく様変わりしているのではないかという気がします。特に理系の先生方に多いのかもしれませんが、パワーポイントのスライドを使って講義される方がかなり増えているのではないかという気がいたします。昔も、例えば資料などはコピーを配って、それを元に講義をされる先生方はいました。一見、便利なようですが、実は私自身は旧態依然といいますか、昔のままに、必ず黒板にチョークで板書いたしまして講義をしていくやり方を基本にしています。スライドをみることは、あるいはみせることは滅多にありません。

また、学生諸君にも講義の初めに「机の上にノートを取る態勢をしっかり用意しなさい」ということを呼びかけています。やはり人間が物事を学び、頭に刻みつけていくという営みのなかでは、白いノートに向かって、いわば全身を使って学ぶ内容を鉛筆と消しゴムで記録していく、これは非常に大事な学びの一つの過程ではないかという気がいたします。

スライドをたくさんみせてしまうと、学生はとてもノートをとろうという意欲がわいてきません。これは一見、大変便利なようですけれども、人間の学び方の基本からは外れているのではないかという気がします。スライドをもらったり、あるいはホームページからダウンロードできるということも、一見、便利なようですが、実はそのようなことは切羽詰まってこないと、例えば試験の直前などでないとほとんどやらないわけです。そして、多くの場合は、そのような資料に目を通すことも復習することもなく、時が経過していってしまうということになりがちではないかと思います。

やはり人間に許された時間と、時間の進むスピードにマッチした、ノートを書く、あるいは文章を整理するという手作業を抜きにして、学問の基盤はできないのではないかと考えている、きょうこの頃でございます。

ありがとうございました。

【キーワード】 意見・エピソード研究・観測