巨大星形成の研究に大きな一歩(2014年12月)

2014年12月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。ことし最後のメッセージをお伝えしたいと思います。

12月、一年を振り返ってみますと、実にことしもいろいろなことがありました。きょうは一番私の印象に残っていることをお伝えしようと思います。

やはり研究面で大変実りの多い年であったといってもいい過ぎではないと思います。特に私が力を注いできたテーマの一つが、巨大な星の誕生の秘密を解き明かすというテーマです。このテーマでの発見のきっかけは2009年に遡ります。いまから5年前に、巨大な星を含む星団が、実は2つの速度の大きく違うガス雲の衝突によって生まれているということを初めてみつけました。

それ以来、数年にわたって第2、第3の衝突の例がないかということを調べたのですが、実は最初の1、2年はかなり苦労しました。つまり、2例目がなかなかみつからなかったのです。どのような探し方をすればみつかるのか、そのみつけ方の筋が、最初はあまりみえていませんでした。しかし、研究というものは考え続けることが本当に大事です。2年、3年、考え続けることによって、例えばこのような傾向、兆候を示している領域では雲同士の衝突がみえそうだというみつけ方のコツのようなものがわかってきました。

いったんそれが解けますと、いってみれば濡れ手で粟をつかむという例えのように、3つ目、4つ目がどんどんみつかり、さらに10個目、20個目の例が次々とみつかってくるという時代に、ことし入ってきました。非常にわくわくする世界です。

この成果は、2009年、2010年頃には「単なる特殊な1、2例ではないか」という受け止められ方をされていたかもしれません。しかし、ことし、特に後半に入って、国際会議で私も何回かお話ししていますが、全く反応が違ってきています。そのような衝突は、特に質量の大きな星の形成に伴って、ほぼ漏れなく、例外なく起きています。雲が衝突することによって非常に強いガスの圧縮が起きますが、それがないと太陽の100倍という巨大な星はほぼ生まれないのではないか、衝突が必要条件なのではないかということがみえてきました。

この研究は、いままでの研究の流れからすると、非常に大きなジャンプがありますので、1回や2回、話を聞いただけでは、にわかにその普遍的な意味、一般性はなかなか理解できません。それは無理もないと思います。ただ、いまや数十個、あるいは100個を超える例を我々は眼の前にしています。このような形で世界の巨大星の形成の研究に、新しく大きな流れをつけることができたということが、ことしの私にとって一つの大きな収穫であったといっていいのではないかと思います。

ことし一年、大変お世話になりました。どうぞ皆さんも良いお年をお迎えください。ありがとうございました。

【キーワード】 研究・観測