基本をあらためて問い直す(2014年9月)

2014年9月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

先月、8月は南半球に行っておりました。オーストラリア、そしてニュージーランドを巡りまして、いろいろな議論を各地の研究者としてまいりました。そのなかで一つ感じたことを、きょうはお伝えしたいと思います。

研究、特に科学の研究は、基本的な物理法則をいろいろ用いて行われていますが、日々、その基本になる関係式、あるいは法則を深く考える機会は、実は研究者でもあまりありません。その結果として、いろいろな研究のなかで使われている概念の意味を、あらためて問うということが、どうも手薄になっているような気がいたします。

その代わりに、どのようなやり方が流行るかと申しますと、例えば影響力のある研究者があることをいっていて、「彼に聞いたら、このような答えが返ってきた」というような話を、残念ながら多くの研究者はどちらかというと鵜呑みにして、疑うことなく研究を続けてしまうことが、かなりあるのではないかという気がしています。そのような基本をあらためて問い直すということを続けていかなければいけません。

実はことしの初め、私はある発見をいたしました。それは1951年にみつかった波長21cmの中性水素、原子の出すスペクトルに関係する発見です。このスペクトルの性質は、みんなが使っている仮定では、実は正しく評価できないということをみつけました。その結果、例えば私達の太陽系を取り巻く宇宙空間にある物質の量が、約2倍程度、変更を余儀なくされたという帰結も含めて、大変大きな影響がありました。

いま世界中で私の論文を巡って、いろいろな人達が反論の論文を書いたり、あるいは議論をしています。世界を旅すると、そのような論争の一端がいろいろなところから耳に入ってきます。そのような意味で、私としては大変楽しい時の流れなのです。

この発見は、基本になる方程式をもう一度ゼロから問い直して、現象に適応していくなかから初めて出てきた結論です。また、機会をあらためて、後日談をお伝えできればと思っております。

ありがとうございました。

【キーワード】 研究・観測