「なんてん」と南天の研究(2014年8月)

2014年8月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

現在、我々は南米のチリに「なんてん」という電波望遠鏡を設置して、主に南の空の観測を行っています。分子のガス雲が放つ電波を調べることによって、星、あるいは惑星がどのように形成されているのかという謎の解明に取り組んでいます。

そもそも、この計画を立案したのは1987年です。未開の南天の分子雲を何とか観測したいという強い意欲を持ち、この計画を進めてきました。実は、当初はオーストラリアに望遠鏡を持っていこうと計画していました。オーストラリアは時差もほとんどありませんし、距離的にも近く、安定した状況にあるということが理由です。ただ、懸念が一つあり、南米のチリと比較しますと、どうしても気象条件が劣るのです。水蒸気が多いために、最高の質の観測はなかなか難しいだろうという感じは持っていました。1988年頃にオーストラリアの現地を調査し、約2週間かけて、主な天文台を訪れました。いろいろな人達と議論して、マウントストロムロ天文台が、キャンベラの近くの標高800mぐらいの場所が、計画が可能な最も良い場所だという結論に、一応、収まりました。

ただ、その後、1991年に南米のチリを訪問し、圧倒的に素晴らしい気象条件、またサイトであることがはっきりして、その時点でチリを最終的な候補地として変更しました。この変更は結果的に大変正しかったと思います。1995年から96年にかけて、南米のチリに「なんてん」望遠鏡を設置することができ、それ以来、非常に多くの素晴らしい成果が上がってきています。

ただし、南の空の研究という意味では、オーストラリアも電波天文学が大変盛んです。オーストラリアの人達は「なんてん」とは少し波長の違う帯域で観測しているのですが、現在、オーストラリアの人達と我々のグループの共同研究は実に盛んで、むしろチリの電波天文学者との共同研究以上に盛んです。共通の天体を軸にして交流を強めており、そのような意味では大変嬉しい共同関係が結ばれています。

ことしの8月もオーストラリアに行ってまいります。10を超える大学、おそらく50人を超える研究者の方々と共同研究を進めていますので、ますます実りある国際交流が実現されていくのではないかと考えています。大変楽しみです。

以上、今月のメッセージとさせていただきます。ありがとうございました。

【キーワード】 国際化研究・観測