2億年前のマゼラン雲(2016年11月)

2016年11月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

私達が南半球からマゼラン雲の研究を行い始めたのは1997年頃で、だいぶ昔の話になりました。なぜマゼラン雲に注目したのかというと、一つの大きなドライビング・フォースは、すでに故人となられましたが、名古屋大学の藤本光昭先生が、日本人ではあるのですが、日本からはみえないマゼラン雲に興味を持たれて、大変優れた研究を残されました。私も大変お世話になった先輩の一人です。

藤本さんは1990年に、一つの新しい説を提唱しています。どのような説かというと、だいたい2億年前に、小マゼラン雲と大マゼラン雲の2つが近接遭遇をしたのではないかという説です。銀河同士が近づくと、お互いに潮汐力を及ぼし合うために、双方のガスがお互いの銀河に重力で引かれ、落っこち合います。小と大を比べますと、大マゼラン雲のほうが重力が強いものですから、実はそうやって引き離されたガスは、すべて大マゼラン雲に留まって、それが大マゼラン雲の周りを回り始めます。

そして、最近の私達の研究で、藤本さんが1990年に提唱した、2つの銀河の相互作用によって引き起こされる雲同士の衝突が、本当に起きているということが非常にはっきりしてきました。太陽の重さの数千万倍という巨大なガスの塊が、いわば板状になって大マゼラン雲に降り注いでいます。これは非常に強力な衝撃です。そのために現在、球状星団ともいうべき、大変活発な巨大星の塊が誕生しているということが、極めて明確になってきました。

残念ながら、1990年に藤本さんがその説を提唱した頃は、なかなか世界から理解されなかったようですが、いま私達は新しい証拠を手にし、藤本さんが提案したシナリオがいかに正しかったかということを世界に向けて発信できるのではないかと考えている、きょうこの頃です。

どうもありがとうございました。

【キーワード】 研究・観測