『遥かなりプログ山』(2016年2月)

2016年2月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

先月、天皇皇后両陛下がフィリピンを訪問されました。大変、有難いことだと思います。ここ数年、あるいはそれをさらに超える長い期間にわたって、お二人が「戦争を二度とくり返してはいけない」という強いお気持ちを持って、アジアのいくつかの国々、あるいは太平洋の国々を訪問してこられたということを、大変有難く感じ、また大切なことだと思っています。

特に、1月にフィリピンを訪問されたわけですが、実はフィリピンについては私も一つ関係する経験を持っております。ここに1冊の本があります。『遥かなりプログ山』というタイトルが付けられた本ですが、これは、当時は従軍看護婦といわれていた、日赤の看護婦の方々の従軍手記です。フィリピンに従軍した、いまでいう看護師の方々の体験を綴った本です。このなかに実は私の母も登場しておりまして、母が中心になってこの戦争の記録を作りました。ここに写っておりますけれども、この上の段にいる、この女性です。当時、母は18、19歳という年齢でしたが、なかなか言葉に尽くせない苦労をして、最後、終戦後に生還したという記録になっております。

この記録を読みますと、戦争の実態、そしてその過酷さが、いまでも本当にひしひしと伝わってきます。私も小さい頃、母から何回も何回も戦争の怖さを聞きました。いったいどのように同僚の看護婦達が飢えで死んでいったのか、あるいは爆撃によって突如、命を奪われたのかということが、兵隊ではない女性の視点から綴られています。

この本は、最初は母が50歳ぐらいの頃に編集し、刊行しました。その後、私が兄とともに、さらに多くの方々に知っていただきたいと考えまして、数百冊を増刷、復刻いたしまして、日本のいろいろな方々、またいろいろな高校等に寄贈させていただきました。少しでも戦争の記録を語り継いでいける、大変ささやかな一つのステップになればと思って続けてまいりました。

特にフィリピンは激戦地で、現地の方々も本当に多数亡くなられ、戦争というものが人間に与える実に非道な苦しみを深く感じさせる戦場の一つだったと思います。ただ、それは一つではなく、さらにいくつもの場所で、それぞれに過酷な経験を皆さんは積まれたのだと思います。

特に昨年、いろいろなことがありましたが、このような戦争を二度とくり返さないという思いを、この時点で私も新たにして、いろいろな行動、あるいは発言に反映させていきたいと考えております。

どうもありがとうございました。

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