医学と天文学(2007年12月)

2007年12月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。ことし最後のメッセージをお伝えしたいと思います。

きょうは人間の健康について考えてみたいと思います。

健康は誰にとってもとても大事なことですよね。我々の健康については、お医者さんがいろいろみてくれるわけですけれども、最近の医学、あるいは診療に一つ疑問があります。特に若いお医者さんでそのような傾向が強いような気がするのですが、いろいろな検査の数値をみてしか治療をされません。私の偏見であってほしいと思いますが、どうもそのような傾向があるような気がいたします。一方、やや経験を積んだお医者さんは、かなり患者の顔をみて、またいろいろお話をしながら、その患者の精神状態も含めて、体全体の雰囲気を五感で感じ取ろうとしていらっしゃるように思います。

やはり数値だけでは、人間という極めて複雑な、まだ私達はそのごく一部しか理解していない、ほとんど宇宙に匹敵する存在のごく小さな断面しか伝えてくれません。血液検査の結果等は、あくまで大変複雑なものの一部だけを無理に切り取ったような材料です。問題は、それ以外の情報を総合することです。例えばどのような顔つきをしているか、全体の雰囲気はどうか、精神的に落ち着いているか、何か不安なことを持っていないか、そのような情報を総合して判断し、それを通して患者さんの健康を改善していく、あるいは健康を保っていくことが、とても大事ではないかという気がいたします。

実は、これは医学に限らないのではないかと思っております。例えば我々が天文学を通して宇宙をみるとき、どうしても一面だけをみて、ある結論に至ってしまうことが多いのですが、やはり宇宙はもっと総合的なものです。いろいろな波長帯の、いろいろなスケールのデータを眺め、いつも広い視野で「この天体の隣には何があるのか」ということを眺めながら、宇宙を考察していく姿勢が必要なのではないかと考えております。おそらく、ほかのいろいろな分野にも共通して当てはまることではないでしょうか。

ことしのご挨拶とさせていただきます。

【キーワード】 学問・教育意見・エピソード