公開セミナー「天文学の最前線」(2009年9月)

2009年9月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

暑い夏ではありましたが、毎年8月に、名古屋大学の宇宙関係の研究室が協力して、公開セミナー「天文学の最前線」という催しを行っております。これは名古屋大学と名古屋市科学館の両者が協力しまして、300名前後の一般市民の方々に、宇宙の最先端のお話をできるだけわかりやすくお伝えするという企画です。毎年3日間ぐらい、8月20日過ぎにキャンパスおよび名古屋市科学館で開催しております。

ことしも、つい2週間ほど前に公開セミナーを開催しました。今回のテーマは磁力線で、「宇宙の磁場」をメインタイトルに、宇宙の磁場に関係するいくつかの講義を行いました。4つぐらいの講義を聞いた後、一日の最後に講演者達が質問に答えたりしながらパネル討論をするという企画です。ことしも半分ぐらいは名古屋大学の研究者で、さらに外からも国立天文台の先生方を含めて4、5人の方々に来ていただき、丸2日間、大変中身の濃い研究の話を楽しむことができました。

このセミナーには、東海地域だけではなく、東京など相当遠くから聞きに来られる方々がいまして、資料代を除きますと、聴講料は特にいただいておりませんので、先端の研究を知りたいと心から思っておられる方々には、とても貴重な情報発信の場になっているのではないかと思われます。

そして、天文台から来られた、太陽を研究していらっしゃる方と少しお話ししていたのですが、その先生は「宇宙の磁場」という非常にとっつきにくい、一般受けしないと思われるテーマで、300名に届こうという市民の方々が聞きに来られるということに大変驚いていらっしゃいました。

理由はいろいろあると思いますが、この公開セミナーが始まったのは1992年で、私も当時、そのスタートに関わりましたが、当初は「受験生を何とか開拓できないだろうか」というモチベーションで、何人かの教員が相談して始めました。ただ、実は高校生諸君は大変忙しくてなかなか来られないので、どうしても平均年齢が高くなりがちなのですが、今回も40~50名は高校生がいたと思います。それから、小中高の先生方も相当数、来られました。また、もうリタイアした年配の方々が、宇宙の勉強をさらに深めようという自分の興味から非常に熱心に参加されていました。
 
質問のレベルも非常に高く、例えばニュートリノなど、いろいろな最新の話題についての質問がどんどん飛び交ってまいりまして、初めて出席した方々がセミナー全体のレベルの高さに非常に驚いておられるという現象もありました。

このように、大変地道ではありますが、毎年、天文学の先端研究を300名の規模で皆さんにお伝えしていくという催しを行うなかで、一つは社会のなかに、このような科学について考える基盤をしっかりと作っていきたいと思っております。

さらに一つ二つ、付録的な目標もあります。セミナーの実行には大学院生諸君が数十名関わっていまして、いろいろな裏方の仕事をしてもらっているのですが、そのような学生諸君が、教員が一生懸命、情報発信しているところを目の当たりにするなかで、そして懇親会あるいは休憩時間等に一般市民の方々といろいろなお話をするなかで、そこから吸収してもらえる非常に貴重な財産があると思うのです。いったい科学あるいは基礎科学は社会とどのようなつながりを持つべきなのか、市民の方々はいったい何を知りたいと思っておられるのか、そのようなことを目の当たりにして卒業していく大学院生諸君が、社会のいろいろな場でさらに基礎科学の基盤形成のために活躍してくれる、実はそのような狙いもあるわけです。

ありがとうございました。

【キーワード】 情報発信研究・観測