月の歴史(2011年1月)

2011年1月度のビデオメッセージ

2011年、最初のメッセージをお伝えしたいと思います。

私達の身近な存在、身近な天体の一つに月があります。私達は小さい頃から月の光を浴び、月の満ち欠けを眺め、実は宇宙に対して思いをめぐらしています。月は大変近くにある、よくみえる天体なのですけれども、いろいろと考えてみますと、そんなによくわかっているわけでもないのです。

古来、特に月の起源については、いろいろな論争がなされてきました。最近になって、ここ10年足らずの間ですけれども、46億年前に地球にかなり大きな、例えば火星ほどの星がぶつかって、地球の周りに輪ができて、この輪の濃い部分がほとんど1カ月の間に固まって月の母体ができたのではないかという説が、いまかなり有力視されています。

それが46億年前ですが、その頃の月の位置は、地球の半径のわずか4、5倍という非常に至近距離にありました。現在の月の距離は、例えば地球の半径を1cmとしますと、約30cmですから、実は月は非常に遠くに遠ざかっていっているのです。現在でも1年間に4cm近く、月はどんどん地球から遠ざかっていることがわかっています。

月を写真に撮ってみますと、現在は太陽と同じぐらいの大きさに見えていますが、これは月の歴史を振り返りますと、実に偶然であることがわかります。最初に地球のすぐ近くに誕生した月は、地球に強烈な潮の満ち引きを引き起こしながら、ある意味で地球をどんどん減速させていきました。地球の自転のスピードは昔はもっと速かったのです。例えば太陽系ができてから、あるいは地球ができてから10億年足らずのうちは、地球における1日の長さは10時間以下でした。これが月に一種のエネルギーを与えつつ、どんどん遠くに飛ばしてきましたが、その飛ばしたエネルギーの反動として、地球の自転スピードは現在の24時間前後の値にどんどん遅くなってきました。

これからさらに10億年経つと、月はもう少し遠くなります。ただ、最初の頃の月の遠ざかり具合に比べると、現在の遠ざかり具合は大変ゆっくりとしたものです。

このような月の過去40数億年の歴史は、まだまだ研究すべきことが多いのです。

さらに、月の表面をみますと、地球を含めて惑星がどのようにしてできたのかということに関する実に豊かな情報があります。もちろん、小惑星そのものを探査するのも非常に大事ですが、同時に月を含めた太陽系の諸天体の詳しい調査、観測、分析が一体となって、この46億年の齢を経た太陽系の歴史がさらに明らかになっていくのだろうと思います。それを宇宙の歴史とつなげることによって、人類の存在そのものに対しても新しい光を当てることができるのではないかと考えております。

ありがとうございました。

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