中国、紫金天文台の電波望遠鏡(2012年9月)

2012年9月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

先月、8月は中国、北京で国際天文連合の総会、いくつかのシンポジウムが開催され、1週間弱、滞在しました。私が組織委員を務める一つのシンポジウムに参加し、また、まとめのトークをしてまいりました。世界から200名を超える力のある優れた研究者が集まってくれました。いろいろな銀河で、どのようにして星ができているのかということに関して、最新の観測データを持ち寄って議論する、大変良い1週間が過ごせたのではないかと思っています。

中国の南京には、紫金山天文台という非常に歴史のある、由緒のある天文台があります。南京に行きますと、小高い紫金山が聳えていまして、その頂上に天文台はあります。私もかつて5、6回、いろいろな共同研究の議論をしに、紫金山天文台を訪れました。もちろん北京の天文台も何回か訪問しております。

そして、シンポジウムの合間に、参加者の一人、ヤン・チーさんという中国人天文学者とお会いしまして、いろいろなお話をしました。ヤン・チーさんは、実は20年ほど前に2年間ほど名古屋大学に滞在いたしまして、私が彼の学位論文の指導をしました。いまやヤン・チーさんも非常に偉くなり、紫金山天文台の電波天文学のチームリーダーとして、20人近くの若い人達を率いて研究をリードする立場に立っています。

紫金山天文台は、20年以上前に、標高3000mを超えるチベットの近くの青海(チンハイ)に口径14mの電波望遠鏡を作ったのですが、当初、10年ぐらいの間は、あるいは10年以上にわたって、実はあまり良い成果が出てこなかった、望遠鏡を動かすのに難渋を極めたという記憶が非常に強いのです。

ところが、今回、ヤン・チーさんを含めて、紫金山天文台のグループとお話をしてみますと、ここ1、2年の間に、望遠鏡は大変素晴らしい完成度に到達しているということに目を見張りました。聞いてみますと、ヤン・チーさんは、いまから10年ぐらい前から、約8年間にわたってほとんど青海に常駐し、大変、厳しい条件下ですけれども、この望遠鏡の指向精度、あるいは鏡面精度を向上させるために非常に粘り強い努力を積み重ねてこられました。大変なことですが、その甲斐あって、2年近く前から非常に順調に分子ガスの大変素晴らしい観測データがどんどんとれるようになってきました。そのことに大変驚き、また嬉しく思いました。

このヤン・チーさんのグループと、私達のグループも含めて、日本の研究者も共同研究を発展させていけるといいなと思いながら帰路に着いた次第です。

どうもありがとうございました。

【キーワード】 研究・観測