「なんてん」のチリ移設をめぐって(2012年8月)

2012年8月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

早いもので、我々の電波望遠鏡を南半球に持っていきましてから、間もなく20年近い月日が流れようとしています。最初に、この計画を考えついたのは1987年で、それからただちに南半球の適地を探しに出かけました。

最初に我々が電波望遠鏡を持っていこうと考えたのは、オーストラリアです。時差もほとんどなく、治安も大変安定していて、安心して学生を派遣できるのではないかと考えました。早速、オーストラリアの方に連絡を取り、2週間ほどの予定で、同僚と2人でオーストラリアに向かいました。天文台のある主な観測地を、レンタカーを借りて巡って、歩きました。

そのなかで、ここなら何とかできるかなと思ったのが、実はキャンベラでした。キャンベラには標高800mぐらいのオーストラリア国立大学、マウントストロムロ天文台があります。オーストラリアの国土は実は大変フラットで、あまり高いところがありません。そのなかで唯一、やや盛り上がったところがマウントストロムロです。当時のマウントストロムロ天文台の台長のAlex Rodgersさんといろいろお話ししまして、「とりあえず我々の望遠鏡をここに持ってきたい」「喜んで受け入れましょう」というお話をいたしました。

ただ、それから名古屋に戻っていろいろ考えたのですが、いま一歩、実は納得できませんでした。なぜかといいますと、オーストラリアは少しお天気が悪いのです。晴天率、あるいは湿度が、実は湿度はあまり高いと電波を吸収してしまいますので、条件としてあまり良くないのです。

そうこうするうちに、1991年、南米のチリに行く機会があり、初めてチリの天文台、アンデスをみました。大変、素晴らしかったです。オーストラリアと比べますと、申し訳ないのですが、天と地の違いがありました。それぐらいアンデスはドライで、素晴らしい観測条件を持っていました。私は瞬間的に心が変わってしまいまして、何とか望遠鏡をチリに持っていこうと心に決めました。それから約5年かかって、1996年に望遠鏡の移設が可能になりました。申し訳ないことに、オーストラリアの天文学者の方々の期待を裏切ってしまったのですが、結果的には、オーストラリアの方々も「正しい選択だった」と、会う人ごとにいってくれます。それぐらいチリは条件の良い場所です。

幸い、チリから「なんてん」を使った素晴らしい成果がいろいろ出てまいりました。実はこの10年あまり、オーストラリアの人達とその成果を分かち合って、どんどんオーストラリアとチリを結び、南の空を相手に国際的な共同研究を進めています。非常に実りある成果を出し続けています。間もなく、8月の初めに、再びオーストラリアを訪問して、これまでの共同研究の成果を振り返り、これからの研究の方向を議論する、そのような旅を計画しています。

今月のメッセージとさせていただきます。ありがとうございました。

【キーワード】 研究・観測電波望遠鏡