地球から宇宙に出ると、使わない言葉や、逆に新しく必要な言葉があると思うので、それを知りたいと思います。

どちらもたくさんあることでしょう。移りゆくこそ言葉なれ、です。地球を離れなくても、死語と新語はたくさんあります。それは文物や生活様式が廃れたり変化したりすることによります。いまでは「省線」とは言いません。鉄道省がなくなったからです(1949年に国鉄が発足する以前には、鉄道省が運営していたので、省線と呼ばれていました)。指すものが私たちの生活からなくなれば、言葉もなくなる運命です。宇宙で住むことになったのが、いつも同じ面を太陽に向けているような惑星だったら、「日の出」「日の入り」といった言葉はなくなっていくでしょう。

一方、当たり前になりすぎて使われなくなる言葉もあります。「電気釜」はほとんど死語ですが、これは、ほとんどすべての炊飯器が電気によるものになったから、取り立てて「電気」を付ける必要がなくなったからです。だとすると、こんな想像ができます。SFのように人類が宇宙空間に大々的に進出して、いろんな恒星系や人工衛星で暮らすようになると、地上と区別した「宇宙」という言葉は使われなくなるかもしれません。つまり、人間が暮らしているのはどこもかしこも宇宙で、宇宙にあまねく人間が暮らしているので、とりわけて「宇宙」と言う必要がなくなるからです。

 逆に、宇宙に進出したときに新しく必要になる言葉、これに答えるのは難しいですね。一つだけ、宇宙に進出することを拒んで地球に残った人たちを指す言葉が必要になるでしょう。これが、どんなニュアンスの言葉になるのか、臆病者と侮蔑することになるのか、古き佳き時代を保つ人々として尊敬することになるのか、どちらだと思いますか。

(戸田山和久)


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